注射による片頭痛予防
(抗CGRP製剤)
2021年に片頭痛の発症を予防する注射薬が認可、発売されました。
頭痛が起こってから治療するのではなく、そもそも頭痛が起こらないようにします。
エムガルティ®(ガルカネズマブ)、アジョビ®(フレマネズマブ)、アイモビーグ®(エレヌマブ)の3剤です。これらはいずれもCGRPという頭痛を引き起こす神経伝達物質の働きを抑える薬で、欧米では5年以上の実績があります。
これらは1ヶ月に1回(アジョビは3ヶ月に1回も可)、クリニックもしくはご自分で注射を打ちます。(保険診療)
はじめはクリニックで注射をします。慣れてきた方は、自宅で自分の都合のよいタイミングで注射をすることもできます。(在宅自己注射)
当院では既に多くの患者様が抗CGRP製剤を使われ、片頭痛の頻度と程度が軽くなり、日常生活が変わったのを実感されています。
内服薬がほとんど必要なくなった方や、頭痛が全く無くなった方もあります。
エムガルティ・アジョビ・アイモビーグの治療成績
内服治療での予防が効かなかった人の70%が効果を実感
- ひどい片頭痛の70~80%の方が頭痛の軽減、痛みの緩和を実感
- 60%の方が頭痛の頻度(半分以下になった)の改善、強力な痛みの緩和
- 10~20%の方が頭痛が完全消失
こんな方におすめです
- 内服の予防薬があまり効かない、もしくは全然効果がない
- 毎日の内服を忘れがち
- 薬を飲むのが苦手
- 忙しくて定期的な通院が難しい
- 受験や仕事など、大事なイベントを控えている
- 痛み止めを飲み過ぎていて心配
- 頭痛がとにかくつらい、楽になりたい
- 頭痛が起こるのをいつも気にして生活している
薬剤の種類・費用
製品名 | エムガルティ | アジョビ | アイモビーグ |
---|---|---|---|
作用機序 | 抗CGRP抗体 | 抗CGRP抗体 | 抗CGRP受容体抗体 |
用法 | 皮下注射 | 皮下注射 | 皮下注射 |
頻度 | (初回2本) 1か月間隔、1本ずつ |
4週間隔、1本ずつ 12週間隔、3本ずつ |
4週間隔、1本ずつ |
費用 (1本あたり) 保険適用 3割負担 |
初回 25,605円 2回以降 12,802円 |
1本 11,727円 3本 35,181円 |
11,694円 |
費用負担が気になる方へ…
付加給付制度という、「医療費が一定の自己負担額を超えた場合、その超えた金額を健康保険組合が支給してくれる」健康保険組合独自の制度があります。 全国健康保険協会(協会けんぽ)や国民健康保険の方は対象外ですのでご注意ください。
在宅自己注射について
当院では2021年10月から抗CGRP製剤の在宅自己注射を行っています。
それまでは病院内の注射だったため、約1ヶ月ごとの決められた日に仕事をお休みして受診をしなければならず、仕事のある方やお忙しい方には受けにくい治療でした。
しかし在宅自己注射により、受診日を気にせず治療ができるようになったため、今では多くの患者様に喜んでいただいています。
自分で注射を行うことに慣れてきたら、3本(約90日分)をまとめて処方することもできますので、年間4回受診するだけで治療を継続することが可能になります。
CGRP製剤自己注射での治療の流れ
STEP
01受付・予約
通常通り、診察の受付を行ってください。予約・当日受付も可能です。
受付時に、「CGRP自己注射の治療希望」とお伝えください。
STEP
02診察
医師が抗CGRP製剤自己注射の治療が可能かどうか、診察にて判断します。
初回からの注射治療が可能と判断した場合は、注射を実施します。
そうでない場合は、頭痛ダイアリーで頭痛の様子を記録していただき(場合によっては内服薬による治療を開始)、2~4週間後に再診とします。
STEP
03初回は看護師が院内で注射
初回の注射時は、看護師が院内で注射を行います。
診療後、頭痛ダイアリーをお渡しします。次回受診までの頭痛の様子を記録してください。
STEP
04再診
約30日後に再診となります。頭痛ダイアリーをご持参ください。
医師の診察の後、看護師が自己注射の指導をいたします。
デモインジェクターを用いて実際の注射の練習をします。
STEP
05 在宅自己注射の処方
会計後、抗CGRP製剤自己注射の処方箋をお渡しします。
薬局で、注射製剤(オートインジェクター)と以下の物品を受け取ってください。
- 持ち運び用バッグ
- 保冷バッグと専用保冷剤
- 使用済みオートインジェクター運搬袋
- 消毒綿
よくある質問
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自分で注射をするのは怖いです
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自己注射の仕方を丁寧に説明し、練習用の器具を使って慣れるまで何度でも練習できます。
どうしても自分での注射が不安な方は、通常通りクリニックでの注射治療を継続できますのでご安心ください。 -
注射をすれば、頭痛がおこらなくなりますか?
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抗CGRP製剤は3種類どの薬剤も、おおむね60-70%程度の人で片頭痛回数が治療前の半分以下に減少し、10-15%前後の人で、片頭痛発作がほとんど起こらなくなります。
効果には個人差がありますが、多くの方で頭痛回数や程度が軽くなる効果がみられています。
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注射に慣れてしまって、頭痛が復活してしまうことはありますか?
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多くの方は注射の効果は毎回有効です。
しかし中には効果が弱くなったようにみえる方があります。
その場合は、注射薬剤の種類を変更したり、いったん休止して内服薬に切り替える等の対応ができます。 -
自分にどのおくすりがあうのかわかりません
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患者さんそれぞれの頭痛の性状やライフスタイルから、適切な薬剤と治療方法を考えていきますので、ぜひご相談ください。
参考サイト
- エムガルティ
- https://www.emgality-patient.jp/
- アジョビ
- https://ajovy.jp/
- アイモビーグ
- https://www.aimovig-pts.jp/